香りの可能性
今年の夏、お客様からお問い合わせを頂きました。
それは、もうすぐ最期を迎える義母のために、香りを作って欲しいというものでした。
お義母さまは末期の癌で、最期は自宅で迎えたいと、家に帰る準備をしているとの事でした。その最期を、心地よく過ごしてもらいたいので、枕元で使える香りを作って欲しいと仰いました。痛みも出てきているとの事だったので、私は、お義母さまの好きな香りで作って欲しいと思ったのです。時として香りは、不愉快な気分にもなるもの。お義母さまの苦手な香りになってしまっては、逆の効果を招きかねないな…。との危惧がありました。
そこで、お嫁さまにご来店いただき、体験レッスンで使用する精油の説明や、香水の作り方をレクチャーさせて頂き、少量の精油をご購入いただいて、ご自宅でお作りいただくようにお伝えさせて頂きました。
後日、ご一緒に作った際のお話と共に、使用した精油のレシピを教えてくださいました。
やっぱり、ご自身で作って頂いて良かった。と思いました。それは、レシピの内容が、私では作り出せない香りだったから…。
お義母さまがメインに選ばれた精油は、「ユーカリ」でした。
「ユーカリ」は、どちらかと言うと、リラックスと言うよりは、覚醒を促すような香り。お尻を叩いて欲しい時の香りと言うイメージ。そして、ミドルノートの精油をすっ飛ばして、トップノートとベースノートのみで作られた香りでした。私もレシピを元に、ブレンドして作ってみましたが、とても強い香りでビックリしました。これを、痛みのある最期の辛い時期に、選ばれるお義母さまとはどんな方なのだろうと思いました。
義母は「明日逝くから、あなたに逢えるのも今日が最後。今までありがとう。」と声を掛けられた翌日の朝に、天国に行きました。と教えてくださいました。
なんと強い…。きっと、覚悟を持って、最期の日までの日々を過ごしておいでだったのだろうと…。あの香りは、お義母さまの覚悟の表れだったのではないか?と勝手ながら推察させて頂きました。
最後の最後は、病院のベッドの上でしたが、香りはずっと持ち続けて、病室でも使ってくださっていたとの事。
今、その香りをお嫁様が使ってくださっています。
「この香りを感じると、義母を思い出し、切なくなるけれど、私も義母のように生きたいと思い出す、よい時間になります。」
と仰ってくださいました。
こんな風に、寄り添うことが、香りには出来るのだと、教えて頂きました。
これからも、お客様から色々な事を教わりながら…。一緒に新しい事を発見しながら…。
進んでいきたいな~。と思っています。
もしも、こんな事出来るかな?と思っている方がいらっしゃったら、一度お声をおかけください。可能な限り寄り添っていきたいな~と思っています。